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第7話 大人のチカラ

last update Huling Na-update: 2025-05-16 11:05:21

――めっちゃ遅くねぇぇぇぇ~!? つか緊張感台無しだしぃぃぃぃ~!!

 心の中で叫んでいた。

 ようやく部屋からカレンの姿がなくなった頃、都築が無造作に転がっていた鉄パイプを手に持った。

「知られちゃってんなら一人も二人も同じだからなぁ……。ぼうずぅぅぅ消える前に参考までに一応聞いといてやるよぉぉぉ。何でわかったんだぁぁぁ?」

「わかったわけじゃない。確信があったわけじゃない」

「ならなんでだぁぁぁぁ?」

――やべぇぇ~、マジでこのままだとやられる3秒前みたいなかんじ? つか、あの人もまだこねぇし、クソッ!!こいつ、もう駄目だ。後ろのヤツにほとんど飲み込まれてやがる!!

「はじめは、ただの違和感だった。この1週間のあんたたちの行動や言動を聞いて、なんか違うなって思っただけだった。でも義妹《いもうと》を連れて行ったあの日俺はあんたの背にいる|ソ《・》|イ《・》|ツ《・》」が見えた。そしてあの言葉」

「あのことばぁぁぁ?」

 焦点が合わなくなった眼が血走り始めている。

「あんた言ったろ?すぐに見つかってもうすぐ帰ってくるって」

 ぴくっと少し上体が揺れる。

 時間稼ぎをしたい俺はさらにまくしたてた。

「あれは、あれは生きていることを知ってるし、いる場所も知ってるから出た言葉だろ? それに、周りの人が言ってた。あんた、カレンがいなくなって連絡も取れなくなったのに全然探すそぶりもしてなかったってな!」

 そこまでをいっぺんに話したからさすがに息切れした。はぁ、はぁと荒い息をする。こういう時の俺ってほんとに情けない。

「んん~、頭の回る子は嫌いじゃないねぇ。どうだい? きみ、俺とくまないかぁぁ?」

「ぜったいにお断りします!!」

 ばばぁ~ん!!っていう効果音が聞こえてくるようにめっちゃカッコよく決めてみたつもり。

「ただ、どうしてカレンの記憶が駅で消えたのかが分からない」

「あぁ、それは簡単さ。マネージャーが話があるって言ったら、普通疑いなく付いてくるさ。そこを眠らせたんだよ」

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